【疾患概念】
指が過剰に形成される疾患.母指多指症,中央列多指症,小指多指症,および鏡手がある.
【頻度】
1,000人に1~3人であり,母指多指症は最も頻度が高い手の先天異常である.多指症のなかで母指多指症が90%,その他は数%の頻度で発生する.
【病型・分類】
母指多指症はWassel分類で7型に分けられるが,3指節母指を別に表記する日本手外科学会分類も用いられる.1,2型が末節型,3,4型が基節型,5,6型が中手型である.小指多指症は発育良好型と痕跡型に分けられる.中央列多指症は指列誘導異常に分類される.
問診で聞くべきこと
同一家系内発生が母指多指症で5%,小指多指症で20%前後あり,中央列多指症は合指や裂手の遺伝性があるので,親に問診する.
必要な検査とその所見
単純X線が必須であるが,関節軟骨の状態が予測できない場合や関節強直がある場合には関節造影を行う.超音波により筋肉の変異も確認できる.
鑑別診断で想起すべき疾患
中央列多指症では合指,裂手の有無を確認し,指列誘導異常を想起する.
診断のポイント
多くは単純X線で診断可能であるが,関節軟骨の状態は関節造影や手術所見で診断することもある.
専門病院へのコンサルテーション
浮遊母指であっても茎が太いものや近位分岐例では,術後に変形や機能障害を呈することがあり,多指症はすべて先天異常手治療専門医への紹介が望ましい.
治療方針
母指多指症では2本の母指から1本の機能的で整容的に優れた母指を再建することが重要である.原則として過剰指の片側を切除するが,低形成あるいは機能障害の強い側を切除する.特殊な場合を除いて,縫合線が背側から見えない側正中部を切開する.IP関節の偏位は側副靱帯の縫縮や切除指の伸筋腱を移行し矯正する.短母指外転筋をいったん切離した場合には残存指に再縫着する.関節の偏位は,切除指からの側副靱帯で修復し,軟骨を薄く削る(