診療支援
治療

ガングリオン
Ganglion
福本 恵三
(埼玉慈恵病院埼玉手外科マイクロサージャリー研究所 所長〔埼玉県熊谷市〕)

【疾患概念】

 関節包,腱鞘や靱帯から生じる嚢腫で,内容は透明でゼリー状の粘液(ムチン)である.

【臨床症状または病態】

 関節あるいは腱鞘上の表面平滑で軟らかい皮下腫瘤で,通常皮膚との癒着はなく,関節包または腱鞘と癒着する.20~40歳代の女性に多い.手関節背側に最も多く発生し,その他手関節橈掌側,屈筋腱鞘上,指節間関節〔遠位指節間(distal interphalangeal;DIP)関節のものは粘液嚢腫とよばれる〕などに多い.神経,骨,筋肉に生じることもある.関節部の違和感や,時に痛みを伴う.発生原因は不明だが,関節包,腱鞘や靱帯のムコイド変性,軽微な外傷とされている.


問診で聞くべきこと

 痛みや違和感など,腫瘤以外の自覚症状の有無と整容面を含めた患者の希望.


診断のポイント

 視診では透光性がある.穿刺でゼリー状の内容を吸引すれば診断が確定するが,手関節橈掌側では橈骨動脈を損傷する可能性があるため注意が必要である.画像診断としてはエコー,MRIが有用である.手関節背側の触知されない小さなもの(オカルトガングリオン)が痛みの原因となることがあるが,その診断にはエコーが特に有用である.


鑑別診断で想起すべき疾患

 脂肪腫,神経鞘腫など軟部組織腫瘍.


治療方針

 ガングリオンと診断されれば,自然に縮小することもあり,特に治療する必要はない.腫瘤に対する整容的要望や,痛みがある場合などが治療対象となる.


治療法

 保存的治療は穿刺による内容物の排出,圧迫が行われるが再発が多い.

 手術的治療では嚢胞とともに発生源である関節包や腱鞘の切除が行われるが,嚢胞自体を切除する必要はない.手関節背側では舟状-月状骨間靱帯より生じ,その茎が関節包を貫いて嚢胞と連続している(図16-24).切除時には茎が貫く関節包を5mm四方程度茎とともに切除して関節内に達し,舟状-月状骨間靱帯上の小さな嚢胞も切除する.手関節

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