診療支援
治療

書痙
Writer's cramp
若林 良明
(横浜市立みなと赤十字病院 院長補佐/部長(手外科・上肢外傷整形外科)〔横浜市中区〕)

【疾患概念】

 ある特定の動作を行う,または行おうとした際に,不随意の筋緊張の亢進(痙縮)や姿勢・肢位異常を起こし,その動作に支障が生じるものを動作特異性ジストニアという.上肢の動作特異性ジストニアとして,書字動作によって起きるものを書痙,楽器演奏によるものを楽器奏者クランプとよび,これらは基本的には同じ病態と考えてよい.理髪師や美容師,調理師,彫刻家などでも同様の症状を呈すことがある.

 大量の書字や動作の反復練習が発症の契機となることが多く,他の動作では症状が出現しにくいこと,人前で症状が悪化することなどから心因性と扱われてきた経緯があるが,近年では同一の動作を繰り返すことで,大脳運動野-淡蒼球-視床-大脳運動野という皮質基底核視床回路に促通経路が形成され,これが特定の動作によって発振してしまうことで生じるという考え方が主流になりつつある.

【臨床症状】

 書字の際,手指が異常に緊張して筆圧が

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