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脊柱の機能解剖
Function and anatomy of the spine
小林 洋
(福島県立医科大学 学内講師)

1.脊柱の役割

 脊柱は,二足歩行を行うヒトの体幹を支持し,同時に脊髄,馬尾および神経根と言った神経組織を内包している.その役割は,①体幹の支持性,②脊椎の可動性,③神経組織の保護の3点に集約される.


2.脊柱の構造

 脊柱は,32~35個の椎骨(頚椎7個,胸椎12個,腰椎5個,仙椎5個,尾椎3~5個)と椎間板から構成される.

 頚椎の数は一定であるが,胸椎,腰椎および仙椎の数の変異は正常人の約5%に出現する.仙椎と尾椎は椎間板と周囲の靱帯が骨化癒合して,各々一塊の仙骨と尾骨となる.

 これらの椎骨が,線維軟骨性の椎間板と交互に重なることにより,可動性の備わった脊柱が構成される.椎骨や椎間板は強靱な靱帯で連結されるとともに,筋・腱の強力な集合体で支持されている.


3.脊柱の構成因子

【1】椎骨

 基本的形態は共通であり,前方に存在するほぼ円柱状の椎体と後方に存在する椎弓から構成される.椎弓は左右の椎弓根と椎弓板からなり,椎弓板は後方で左右が合して棘突起となる.この棘突起の形,大きさ,方向は,脊椎の部位によって異なる.

 椎弓は,左右一対の横突起,上関節突起,下関節突起を有し,関節突起は隣接する椎骨の関節突起と滑膜性連結を形成する.

 一方,棘突起と横突起は,椎骨に停止する筋の停止部位となる.脊柱の尾側ほど椎体が大きくなるのは,尾側ほどそれより頭側の構造物によって生じる重力と応力が大きくなるためである.

【2】椎間板

 中心部の髄核とその周囲を囲む線維輪,軟骨終板で構成される.成人の健常な髄核は,自由水を含む高粘稠性ゲルで構成される.線維輪は輪状の層状構造をしたコラーゲン線維により構成され,加齢の影響を受けやすい.前後屈,側屈,回旋運動など脊柱の3次元的な動きを可能にすると同時に,脊椎長軸方向の圧を緩衝している.椎間板内圧は姿勢により大きく変化する.

【3】前縦靱帯

 椎体間を連結し,椎体と椎間板の前面

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