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整形外科的脊椎・脊髄疾患のとらえ方/診断手順
Diagnosis of spine and spinal cord disorders
國府田 正雄
(筑波大学医学医療系 准教授)

【概説】

 整形外科的脊椎・脊髄疾患の診断においても,他疾患と同様に問診,視触診,身体診察,画像診断の順に診察を進める.問診は重要で,診断の絞り込みに有用なので軽視すべきではない.視触診,身体診察はなおざりにされがちであるが,かいつまんで見るだけでもかなり診断に役立つ.画像診断の重要性は言うまでもないが,問診・視触診・身体診察・単純X線で疾患・罹患高位をある程度推定してCT・MRIを適切に施行することが,診断の精度を向上させるうえで重要である.


1.問診

 他の疾患と同様,整形外科的脊椎・脊髄疾患の診断においても問診が非常に重要なのは論をまたない.基本情報として年齢・性別・家族歴・既往歴・職業(歴)・スポーツ歴などは必須の項目である.

 職業歴は,特に現在の職業だけでなく,実際に携わっている業務を具体的に聴くことが重要である.業務に伴う特異的な姿勢・動作が症状の原因になっている可能性や,手術をする場合の術式選択にも業務は重要な要素である.例えば成人脊柱変形患者の職業が野菜農家でかがみ込む動作の多い場合は,骨盤から上位胸椎までの長範囲の矯正固定術は躊躇されるなど,業務が術式決定の重要な要因になりうる.

 既往歴は,可能な限り詳しく聴取する必要がある.例えばがんの既往は,たとえ年数が経過していても重要である.転移性骨腫瘍の診断に問診上最も有用であるのは,がんの既往であるという報告がある.乾癬や炎症性腸疾患の既往や家族歴などは,脊椎関節炎を疑う重要な病歴の代表例である.

 発症様式を可能な範囲で聴取する.急性発症なのか緩徐発症,あるいは慢性疾患の急性増悪か,など発症様式が診断の助けになることが少なくない.近年増加が著しい骨脆弱性に伴う骨折では,受傷機転がはっきりしないことも多い.

 動作・姿勢に伴う症状変動は重要である.歩行時しびれが悪化し休むとおさまるのは,典型的な腰部脊柱管狭窄症の症状であ

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