診療支援
治療

骨粗鬆症性椎体骨折
Osteoporotic vertebral fracture
星野 雅俊
(大阪市立総合医療センター 副部長〔大阪市都島区〕)

【疾患概念】

 骨粗鬆症は,骨密度の低下と骨質の劣化による骨強度の低下を特徴とし,骨折の危険性が増大する骨格疾患である.骨粗鬆症性椎体骨折は,骨粗鬆症を基盤とし,軽微な外力(“立位からの転倒”以下の外力)によって発生した非外傷性骨折であり,脆弱性骨折と表現される.

【頻度】

 骨粗鬆症による脆弱性骨折が最も高頻度に発生する部位が椎体である.国内の年間発症件数は約90万と推定されており,70歳代前半の25%,80歳以上の43%が椎体骨折を有するとされる.

【臨床症状または病態】

 主な臨床症状は体動時の腰背部痛であり,特に臥位から座位あるいは立位などへの姿勢変換時に強い.疼痛部位は骨折椎付近より尾側外側付近であることが多い.受傷機転がはっきりしない場合も少なくない.また疼痛を伴わない骨折が2/3とされており,身長低下や円背進行が起こって気づく場合もある.好発部位は胸腰椎移行部(第11胸椎~第2腰椎)である.骨折治癒後も,楔状化や圧潰など椎体骨折変形が残るため,脊柱後弯変形の原因となる.脊柱後弯は筋疲労性・阻血性の慢性背部痛の原因となり,ADL・QOL低下と結びつく.通常3~6か月で骨癒合が得られるが,約20%の症例では骨癒合不全・偽関節になり強い背部痛が遷延する.局所不安定性や骨折骨片の突出により,下肢のしびれや麻痺,排尿排便障害が遅発性に出現することもある.


問診で聞くべきこと

 受傷機転の有無や,疼痛の特徴(姿勢変換時の痛みや疼痛部位が脊柱の側方であること)をチェックする.脊柱後弯変形や身長低下の出現にも注意する.骨粗鬆症のリスクは,両親の大腿骨近位部骨折歴,喫煙,ステロイド薬の使用,関節リウマチ,続発性骨粗鬆症(胃切除後,糖尿病,慢性腎臓病など)の有無,過度のアルコール摂取,ステロイド歴,骨折歴であるのでこれらには特に注意する.その他,転移性腫瘍や脊椎炎との鑑別のため,既往歴や発熱の

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