診療支援
治療

変性腰椎後弯
Degenerative lumbar kyphosis
森平 泰
(獨協医科大学 准教授)

【疾患概念】

 変性腰椎後弯は加齢変性による高齢者のいわゆる「腰曲がり」で,多椎間にわたる椎間板高の減少や椎体骨折による椎体高の減少で,脊柱前方要素が短縮して生じる腰椎の後弯変形である.前屈作業動作などの環境因子や,遺伝的素因などが発症に関係する.椎間板変性は下位腰椎に多く,骨粗鬆性椎体骨折は胸腰椎移行部や上位腰椎に多く生じるが,両者はしばしば合併する.脊柱伸筋群は萎縮し,椎間関節包や棘間棘上靱帯が弛緩することで脊柱後方要素は延長する.また椎体側面にある大腰筋の走行は前方移動して,腰椎前屈方向へのベクトルに変化し,自力で体幹の前傾を修正することが困難となる.

【臨床症状と病態】

 体幹の前倒れによる,立位での作業や歩行などの日常生活困難が主な症状である.立位や歩行の持続により,腰背部の疼痛や倦怠感が増強し,それに伴い腰椎がさらに前屈し,体幹の直立位保持が困難となる.シルバーカーなどを使用したつかまり歩行や座位で,腰痛が軽減もしくは消失するのが特徴的である.腰椎前屈位では脊柱管や椎間孔は拡大するが,椎間板膨隆や側弯変形により脊柱管狭窄や椎間孔狭窄を合併して,下肢症状を認めることもある.

 後弯位が進行すると,胸腔や腹腔の圧迫により内臓機能にも悪影響を及ぼす.逆流性食道炎や拘束性呼吸障害との関連性が指摘されている.


問診で聞くべきこと

 腰痛の程度や下肢痛の有無,後弯変形による日常生活制限について聞く.後弯変形の罹患期間と最近の進行についても把握する.他の疾患同様に,神経根症や間欠性跛行などの神経学的異常所見を評価する.腰椎後弯は短時間の立位動作では発生しないことも多く,台所作業や持続歩行時の困難な状況を具体的に聞き出す.立位作業において肘をついたり寄りかかったりしてしまうまでの時間が,日常生活上の困難度の把握に重要である.

 生活歴として前傾姿勢などの労働環境や,遺伝的要因の把握のため血縁

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