診療支援
治療

老人性円背
Senile kyphotic spine deformity
藤井 朋子
(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座 特任研究員)

【疾患概念】

 高齢者における腰背部の過後弯であり,単に後弯症ともよばれる.骨粗鬆症をベースとした椎体の変形や骨折,椎間板の変性と菲薄化,背筋筋力の低下など複数の要因からなる.椎体骨折数が増えるほど胸椎後弯角は増大するが,後弯症のある高齢者のうち,椎体骨折があるのは1/3程度であったとの報告がある.

【頻度】

 後弯症の有病率は,評価方法や定義にもよるが20~40%とされる.

【臨床症状】

 背景に骨粗鬆症や新鮮椎体骨折がある場合は,腰背部痛を伴う.痛みを伴わない場合もあるが,後弯変形が進行すると,立位でのバランスを保持するための背筋の持続的な収縮により,筋血流低下,筋肉内圧の上昇が起き,遅発性筋痛をもたらすと想定される.後弯症では胃食道逆流症,呼吸機能の低下を伴ったり,バランス能力や歩行速度などの身体機能の低下,転倒,QOLの低下,生命予後不良との関連が報告されている.


問診で聞くべきこと

 発症の時期,徐々に起こったか比較的短期間に起こったか,腰背部痛の有無と程度,転倒などのきっかけがあったか,転倒しやすいか,骨粗鬆症の治療を行っているか,ADLに支障があるかなどが,診断と治療方針の決定に役立つ.


必要な検査とその所見

 診察では,立位と比べて仰臥位で後弯の改善がみられるかチェックする.胸腰椎あるいは全脊柱の正面・側面X線撮影を行う.胸椎後弯角の増大,腰椎の後弯,骨盤後傾などがみられる.新鮮圧椎体骨折が疑われるが,X線で判断できない場合,可能ならばMRI検査を行いSTIRで椎体の高輝度変化がないか確認する.


診断のポイント

 雨戸の開け閉めなど,ちょっとした動作の後に発生した急性の痛みでも,寝返りで痛いという訴えがある場合は新鮮椎体骨折があることが多い.


治療方針

【1】保存療法

 椎体骨折がある場合や骨粗鬆症と診断されれば,骨粗鬆症の薬物療法を開始する.

 後弯症の保存的治療としては運動療法,装具

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