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頚椎の解剖
Anatomy of the cervical spine
岩渕 真澄
(福島県立医科大学会津医療センター 教授)

 頚椎は7つの椎骨で構成される.構造上,第1頚椎(環椎)と第2頚椎(軸椎)の上位頚椎(環軸椎)と第3頚椎から第7頚椎の下位頚椎とに分けられる.本項ではそれぞれの解剖と頚椎を通る脊髄神経との関係について述べる.


1.上位頚椎

 環椎と軸椎は,機能解剖学的に下位頚椎とは異なる構造を有する.環椎は環状の構造をなし頭蓋骨を支える機能を有する.椎体は持たない.後頭骨と環椎間には椎間板はないが,後頭骨との間で後頭環椎関節をなす.この関節は主に前後屈運動機能を有する.軸椎は,椎体が頭側へ伸びて歯突起となり,環椎との間で環軸関節をなす.環軸椎間にも椎間板はない.環軸関節は,環椎前弓内面と歯突起前面との間で正中環軸関節,環椎下関節面と軸椎上関節面との間で外側環軸関節をなす(図19-1).環軸関節の主機能は回旋運動であり,左右45°の回旋が可能である.頚椎全体の回旋は左右70°であるので,その約60%は環軸関節でなされる.

 環椎は環状を呈し,前弓,後弓,両側外側塊からなる.後弓の両側には椎骨動脈と後頭下神経の通る椎骨動脈溝がある.両外側塊には頭側面と尾側面にそれぞれ関節窩があり,頭側面では頭蓋骨と,尾側面では軸椎と関節をなす.軸椎の尾側面は,第3頚椎と椎間関節および椎間板を介して連結している.外側に位置する横突孔は椎骨動脈が通る.

 環軸椎間を連結しているのは,十字靱帯と翼状靱帯である.歯突起は十字靱帯によって環椎と後頭骨に固定され,さらに歯突起は翼状靱帯によって後頭骨へ固定されている.十字靱帯は横靱帯と縦靱帯により構成される.横靱帯は環椎外側塊間を繋ぎ,縦靱帯は後頭骨と軸椎間を繋いでいる.翼状靱帯は,歯突起先端から後頭骨へ向かって左右1本ずつ存在し,歯突起と後頭骨とを繋いでいる.さらに2本の翼状靱帯の間に歯突起尖端靱帯が存在し,後頭骨と歯突起とを繋いでいる.これらの靱帯は強靱であり,後頭骨と環軸

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