診療支援
治療

頭蓋底陥入症
Basilar invagination or impression (BI)
村田 英俊
(横浜市立大学大学院脳神経外科学 准教授)

【疾患概念】

 頭蓋底陥入症(basilar invagination or impression;BI)とは,軸椎歯突起先端が上方偏位し頭蓋内に陥入した状態と定義される.頭蓋底部での骨軟部奇形による陥入症をbasilar invaginationと称し,これらの奇形を伴わない陥入症をbasilar impressionと称す.しかし,双方ともに上位頚椎の上方偏位と陥入をきたすため,治療的観点からは,頭蓋底陥入症(BI)として区別しないで用いられることが多い.BIは陥入した歯突起が,上位頚髄や延髄の圧迫をきたす,あるいは椎骨脳底動脈を圧迫・潅流障害を生じさせる症候群である.本稿ではその病態と治療を中心に概説する.

【臨床症状】

 BIは陥入した歯突起が,上位頚髄や延髄の圧迫をきたす,あるいは椎骨脳底動脈を圧迫・潅流障害を生じさせる症候群である.

 BIの症状は,筋骨格に由来するもの(頭痛,後頚部痛など),脳幹圧迫に由来するもの(嚥下障害,構音障害,眼振),小脳圧迫に由来するもの(四肢・体幹失調など),脊髄圧迫に由来するもの(四肢しびれ,手指巧緻性障害,四肢筋力低下)など,圧迫される部位により多彩である.圧迫により生じる椎骨脳底動脈血流不全に由来する場合もある.症状は前屈位で生じやすい.

 一般的には,後頭部痛,平衡障害(体幹失調),巧緻運動障害,四肢のしびれでの発症頻度が高く,進行に応じて上肢,下肢の麻痺が生じてくる.

 水頭症を合併する場合には意識障害や頭蓋内圧亢進症状を,脊髄空洞症を合併する場合には,解離性感覚障害などの脊髄空洞症に準じた症状を呈する.

 脳幹圧迫や口腔顔面奇形により,睡眠時無呼吸症候群をきたしている場合も少なくない.


問診で聞くべきこと

 前述のとおり,BIの症状は多彩である.SawinとMenezes(1997)によるBIの症状のまとめによると,頭痛(76%),下位脳

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