診療支援
治療

Chiari奇形
Chiari malformation
名越 慈人
(慶應義塾大学 講師)

【疾患概念】

 Chiari奇形Ⅰ型は,小脳扁桃や脳幹が大後頭孔を越えて脊柱管へ嵌頓する病態である.その結果,脳脊髄液の還流経路が破綻し,脳脊髄液が脊髄内へ流れ込み空洞を形成することが多い.実際,脊髄空洞症の約50%にChiari奇形を合併している.

【分類】

 Chiari奇形はⅠ型がほとんどである.Ⅰ型の病態は上述のとおりで,成人に多い.Ⅱ型は小児に多く,脊髄髄膜瘤や水頭症を発症する.非常にまれではあるが,Ⅲ型は小脳が大後頭孔より下垂し,Ⅳ型は小脳の形成不全を認め,双方とも生下時より重度の障害を呈する.

【臨床症状】

 60~80%の患者で頭痛を訴える.好発年齢は20~40歳で,女性に多い傾向がある.空洞症は50~80%の患者に認め,脊髄における空洞の局在によって,さまざまな症状が出現する.

①運動機能障害:筋力低下,筋萎縮,巧緻運動障害,痙性

②感覚機能障害:疼痛,知覚異常,しびれなどの異常感覚,異痛症

③その他の所見:反射異常,膀胱直腸障害


診断のポイント

・頚椎MRIを撮影し,小脳扁桃の位置を確認する.大後頭孔を越えて尾側に嵌頓している場合,確定診断となる(図19-10).

・脊髄空洞症では,T1強調像で低信号,T2強調像で高信号の領域を脊髄内に認める.

・頚椎MRIで空洞を認めた場合,空洞が胸髄や円錐部まで達している可能性もあり,脊髄全長または他の脊髄高位における追加の画像検査が必要である.


治療方針

 無症状または空洞が小さい場合は,治療を必要としない.経過観察中,症状の出現や増悪があれば治療を検討する.


保存療法

 対症療法のみである.症状が軽度の場合,手術が行えない場合,術後も症状が残存する場合に適応となる.神経障害性疼痛のコントロールのために,鎮痛薬,抗うつ薬,抗てんかん薬,抗痙攣薬,オピオイドを用いる.運動機能やquality of life(QOL)を維持するため,理学療法などリ

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