【疾患概念】
本症候群は,Maurice KlippelとAndré Feilが1912年に報告した脊椎欠損を有する一剖検例に由来する.剖検例の特徴から,①短頚,②低位毛髪線,③頚部可動域制限を3徴とする先天性頚椎欠損(癒合)例を,Klippel-Feil症候群と呼称するようになった.現在では,上記古典的3徴が揃っていない場合も含め,「頚椎に先天的な癒合が認められる症例」全般を指すことが多い.
【頻度】
1/40,000~42,000出生であるとされる.男女比は女性が65%とやや多い.
【病型・分類】
癒合パターンから,広範囲の頚椎と上位胸椎の癒合を特徴とするⅠ型,1,2椎間の癒合を特徴とするⅡ型,頚椎に加え下位胸椎または腰椎の癒合を併発するⅢ型に分類される(Feil分類).
【病態】
古典的3徴すべてを認める例は少なく,50%以下である.3徴のうち最も多い徴候は,頚部可動域制限である.
問診で聞くべきこと
本症候群は,他の症候群や内臓奇形を合併することも多いため,問診では合併症,既往症,その治療歴についての情報を得ることが重要である.
必要な検査とその所見
X線(図19-11a図)またはCT(図19-11b図)にて癒合椎を確認する.癒合椎はC2/3椎間に最も多く認められる.頚椎前後屈動態撮影にて,癒合隣接椎間における異常椎間可動性の有無を確認する.頚椎に癒合椎を認めた場合,胸椎以下の癒合椎の有無を確認する.他の骨性・中枢神経奇形の合併につき評価を行う.代表的なものとして環椎後頭骨癒合症,歯突起骨などの上位頚椎奇形,Chiari奇形,Sprengel変形,側弯症が挙げられる.上位頚椎奇形の評価には,CTが有用である.Chiari奇形の合併有無の確認には,MRIを施行する.Sprengel変形は,発生過程における肩甲骨の下降障害により,肩甲骨が高位となる奇形である.Sprengel変形
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