診療支援
治療

筋性斜頚
Muscular torticollis
村上 玲子
(新潟大学医歯学総合病院整形外科・リハビリテーション科 助教)

【疾患概念】

 片側の胸鎖乳突筋の線維化による拘縮が原因で,新生児・乳児期より特徴的な外観をとり,頚部可動域制限を生じる.成因には諸説あるが,解明はされていない.非外傷性斜頚の原因としては最多である.

【臨床症状】

 新生児~乳児期に家人が頚部のしこりに気づいて,医療機関を受診することが多い.患側の胸鎖乳突筋に一致した頚部に腫瘤を認め,その大きさは生後2,3週でピークを迎えた後,徐々に消退する.頚部可動域は健側への側屈,患側への回旋で制限される.仰臥位では頚部を健側へ回旋する傾向があるため,健側の後頭部が平坦になっていることが多い.年長児では顔面非対称,頭部の健側への側方偏位,代償性の脊椎側弯,肩の高さの左右差を認めることがある.青年期や成人まで放置されていると,肩こり,頭痛などの自覚症状を訴えることがある.


問診で聞くべきこと

 新生児期または乳児期に頚部のしこりに気付いていたかどうか,斜頚位に気が付いた時期,注視するときなど斜頚位が顕著になる場面があるか,斜視の有無,基礎疾患の有無,は非筋性斜頚との鑑別に有用である.年長になってから受診した場合は,新生児~乳児期の写真も有用な情報となることが多く,家人に持参してもらうと参考になる.


必要な検査とその所見

(1)単純X線検査

 頚椎2方向撮影像で先天性の椎体の形態異常(奇形椎)が原因である,骨性斜頚との鑑別を行う.また,年長例では,患側胸鎖乳突筋の鎖骨枝付着部の骨性隆起を認めることがある.立位全脊柱前後像では代償性側弯を認めることがある.


鑑別診断で想起すべき疾患

 筋性斜頚が否定的な場合は,骨性斜頚や眼性斜頚,耳性斜頚などを疑い,精査を進める.中枢神経系の異常や分娩麻痺,炎症性斜頚,環軸椎回旋位固定,鎖骨骨折なども鑑別に挙がるが,これらは既往歴や疼痛の有無,先行感染,外傷歴などで容易に鑑別が可能である.


診断のポイント

 典型例では,新生児~乳

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