【疾患概念】
頚部脊柱管の初育性狭窄を背景とし,加齢退行性変化,前後屈不安定性および軽微な外傷が加わって,脊髄の機械的圧迫あるいは血行障害が生じる結果,発症する疾患である.
初発症状としては,両手のしびれや巧緻運動障害が認められる.具体的には箸の使用,書字,衣服のボタンかけなどに困難をきたし,下肢では階段昇降(特に降りるとき)の困難を感じるようになる.重症化すると,箸が使用不可能になり,歩行困難になり,膀胱直腸障害が出現する.脊髄への圧迫の程度により重症度は異なるが,両上肢のみの初期から四肢不全麻痺へと進行する例が多い.
【頻度】
男性の発症が女性の2倍以上で,50歳代での発症が多い.C5/6が責任高位である場合が多いが,高齢者は障害高位がC3/4とC4/5と頭側で障害される場合が多い.また罹病期間が長く,手術成績は一般的に非高齢者よりも劣る.
問診で聞くべきこと
初発症状,発症の時期,契機を確認する.転倒などの外傷が契機となっている場合,症状の経時的変化(増悪,改善,不変など)が,脊髄損傷と本症を鑑別するうえで重要である.既往歴では,上肢の末梢神経絞扼性疾患や,腰部脊柱管狭窄,脳梗塞など,本症の鑑別になる疾患について確認する.
必要な検査とその所見
神経学的所見から障害高位を推測し,それを裏付ける所見を画像所見で確認するという手順で行う必要がある.なぜならば,無症状の形態異常や加齢的変化による形態異常を原因と誤って判定してしまう可能性があるからである.障害高位が一致しない場合は,他の疾患や他部位の病変との鑑別を要する.
高位診断に関しては,通常は深部反射,筋力,および感覚障害の範囲からある程度推定可能であるが,多椎間に障害があり困難な場合も少なくない.C5/6やC6/7高位での障害では,上肢症状がないかごく軽微で,胸髄症様の症状を呈することがあり注意を要する.
一般に深部反射は
関連リンク
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