【疾患概念】
上位頚椎・頚髄損傷は,その解剖学的特性から中・下位頚椎・頚髄損傷とは異なった臨床像を呈する.上位頚椎部では脊柱管が広いため脊髄損傷を免れやすい一方,脊髄損傷をきたせば四肢麻痺のみならず重篤な呼吸筋麻痺が生じうる.
【頻度】
全頚椎損傷の約20%が上位頚椎損傷であり,そのうち歯突起骨折が最も多い.65歳以上の高齢者では全頚椎損傷のなかで歯突起骨折が最も多く,80歳以上に限定するとほとんどの頚椎損傷が歯突起骨折である.近年の超高齢社会を反映して,高齢者の歯突起骨折は増加している.
【病型・分類】
(1)環椎破裂骨折(Jefferson骨折)
第1頚椎,すなわち環椎の骨折であり,頭側からの圧迫力により生じる.骨折した外側塊は外方向へ転位することにより,脊柱管は拡大することが多いため,脊髄損傷をきたすことは少ない.
(2)歯突起骨折
第2頚椎,すなわち軸椎の歯突起に生じる最も頻度の高い骨折形態であり,屈曲,伸展,剪断などさまざまな外力により生じる.歯突起骨折の分類としてはAndersonの分類が用いられることが多い(図19-22図).
(3)軸椎関節突起間骨折(hangman骨折)
軸椎に生じる骨折として歯突起骨折に次いで頻度が高い骨折であり,主に頚部の過伸展により軸椎の関節突起間部に生じる.環椎破裂骨折と同様に脊柱管が拡大する方向に転位するため,脊髄損傷をきたすことは少ない.Hangman骨折の分類としてLevine分類があり,治療方針決定のために有用である(図19-23図).
(4)そのほかのまれな上位頚椎損傷
蓋膜と翼状靱帯の損傷により生じる環椎後頭関節脱臼は,きわめてまれな損傷形態であるがほとんどが致命的である.外傷性環軸椎脱臼は,横靱帯損傷,環椎骨折,軸椎骨折などに合併してみられることがある.
【臨床症状】
上位頚椎損傷では頚部痛や後頭部痛がみられることが多いが,前述した
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