【疾患概念】
上位頚椎・頚髄損傷は,その解剖学的特性から中・下位頚椎・頚髄損傷とは異なった臨床像を呈する.上位頚椎部では脊柱管が広いため脊髄損傷を免れやすい一方,脊髄損傷をきたせば四肢麻痺のみならず重篤な呼吸筋麻痺が生じうる.
【頻度】
全頚椎損傷の約20%が上位頚椎損傷であり,そのうち歯突起骨折が最も多い.65歳以上の高齢者では全頚椎損傷のなかで歯突起骨折が最も多く,80歳以上に限定するとほとんどの頚椎損傷が歯突起骨折である.近年の超高齢社会を反映して,高齢者の歯突起骨折は増加している.
【病型・分類】
(1)環椎破裂骨折(Jefferson骨折)
第1頚椎,すなわち環椎の骨折であり,頭側からの圧迫力により生じる.骨折した外側塊は外方向へ転位することにより,脊柱管は拡大することが多いため,脊髄損傷をきたすことは少ない.
(2)歯突起骨折
第2頚椎,すなわち軸椎の歯突起に生じる最も頻度の高い骨折形