【疾患概念】
頚椎症の一型であり,上肢の筋萎縮を主徴とし,感覚障害は全くないか軽微という臨床的特徴を持つ.
【臨床症状と病態】
40~60代の男性に多い.神経障害高位によって近位型と遠位型に分けられる.近位型では三角筋,上腕二頭筋,腕橈骨筋,遠位型では上腕三頭筋,前腕筋群,手内在筋が障害される.脊髄前角や前根が機械的な圧迫や二次的な血行障害を受けて生じると考えられている.
問診で聞くべきこと
初期症状や継時的な症状の変化をできるだけ詳しく聞き取る必要がある.肩の外傷歴や球麻痺症状の有無についての聴取も他疾患との鑑別に重要である.
必要な検査とその所見
四肢の徒手筋力検査,感覚障害の確認,四肢腱反射のほか,病的反射の検査を必ず行う.
単純X線画像では6方向撮影する.椎間板腔の狭小化やLuschka関節の骨棘形成などの頚椎症性変化が認められる.MRI画像では,腹側からの骨棘や肥厚した後縦靱帯などによる脊髄や神経根の圧迫所見を認めることが多いが,神経根障害の画像診断は容易ではなく無症候性の椎間孔狭窄も少なくないため,神経学的所見との総合的な判断が必要である.針筋電図での脱神経電位の存在や分布の確認は他疾患との鑑別に有用となる.
鑑別診断で想起すべき疾患
肩関節周囲炎,腱板断裂,筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)などの運動ニューロン疾患(motor neuron disease),神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy)などの末梢神経疾患.
診断のポイント
①比較的限局した上肢の筋力低下を認める.
②知覚障害や長索路(long tract)症状はごく軽度か全くない.
③画像検査上の障害部位と神経学的に一致する筋力低下を認める.
④神経原性疾患や末梢神経疾患などほかの疾患を否定できる.
専門病院へのコンサルテーション
本疾患を疑っ