診療支援
治療

脊髄損傷患者の急性期の排尿管理
Urinary management in acute spinal injury
高橋 良輔
(総合せき損センター泌尿器科 部長〔福岡県飯塚市〕)

1.受傷直後の排尿管理

 受傷直後は,合併損傷を含めた脊髄損傷に対する初期治療が行われる時期であり,安静保持と体液管理を目的に,尿道カテーテルが留置されることが多い.この際のカテーテルは,細径(男性:12~14Fr,女性:14~16Fr程度)で蓄尿バッグまで一体型のものを選択すべきである.男性ではカテーテルによって尿道が圧迫された結果,医原性尿道下裂や瘻孔形成などを発症しないように,陰茎を腹側に向けてカテーテルを下腹部に固定することが推奨されている.これによって尿道の屈曲が避けられ陰茎根部での尿道損傷のリスクが軽減される.尿路感染の予防を目的とした抗菌薬の使用は,耐性菌の発生を促すという重大な問題があるため推奨されない.尿道留置カテーテルの交換間隔は通常2~4週である.


2.尿道留置カテーテルを抜去するタイミング

 長期にわたる尿道カテーテル留置は,尿路性器感染症(急性精巣上体炎,急性前立腺炎),医原性尿道下裂(外尿道口が大きく裂ける)などの合併症の頻度が高くなるため推奨されない.社会的にやむをえない場合を除いて,必要性がなくなった時点ですみやかに抜去するのが望ましい.そのタイミングとしては,①脊髄損傷に対する手術や合併損傷に対する初期治療が落ち着いて全身状態が安定し,②患者自身で飲水量のコントロールが可能となり,③1日尿量が1,500mL程度(その後必要となる可能性のある清潔間欠導尿の頻度に配慮して)になった時点,で考慮するのがよい.可能ならばこの時点で脊髄損傷患者の排尿管理に慣れた泌尿器科医と連携することが望ましいが,難しい場合はまず尿道留置カテーテルを抜去して,スタッフによる清潔間欠導尿に移行すべきである.その際,1回導尿量が400mLを超えないように導尿回数を設定する.一方,高齢者や全身状態が落ち着かない患者において,やむをえず長期の留置カテーテル管理を要する場合は,カテ

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