診療支援
治療

脊髄損傷患者の慢性期の排尿管理
Urinary management in chronic spinal injury
須田 浩太
(北海道せき損センター 副院長〔北海道美唄市〕)

 脊髄損傷(以下脊損)において排尿障害は生涯にわたって続く可能性が高く,神経因性膀胱に精通した泌尿器科医による定期的フォローアップが理想である.しかし,整形外科医やリハビリテーション科医などが慢性期脊損患者の総合診療的な役割を果たさねばならないこともあるため知っておくべき病態や合併症につき解説する.慢性期排尿管理は,①腎機能維持,②合併症対策,③排尿コントロールの3つが重要となる.


1.腎機能維持

 腎不全は慢性脊損患者の死因で常に上位にランクインしている.また,脊損患者は腎機能低下に伴い生命予後が短縮することが報告されている.すなわち,慢性期排尿管理の最大目標は腎不全や腎機能低下を防ぐことである.そのためには後述する神経因性膀胱に起因するさまざまな合併症を最小限に抑える努力が重要となる.ところで脊損患者では麻痺領域の筋量低下に伴いクレアチニン産生量が低下しているため,腎機能障害が生じても血清クレアチニンが上昇しづらく,上昇した時点ではかなり腎機能が低下していることが多い.よって血清クレアチニンは予防的観点からは指標として疑問がある.現時点では24時間クレアチニンクリアランス,シスタチンC,蛋白尿が有用視されている.最も簡便でわかりやすいのは蛋白尿であり,少なくとも蛋白尿が続く場合は詳細な腎機能評価を追加する.超音波断層診断法は非侵襲性で水腎症の診断に有用であり年1~2回の評価が望ましい.水腎水尿管,膀胱尿管逆流,腎結石,水腎症,萎縮腎があれば腎機能低下を防ぐためにも尿路管理を厳密に行う必要がある.


2.合併症対策

【1】尿路感染症

 脊損患者に最も頻度が高い合併症であり常に配慮しなければならない.排尿が順調であれば少なく,不順であれば増える.尿道カテーテル留置や膀胱瘻では必発と考える.尿路結石,残尿,不潔な自己導尿が危険因子となる.起炎菌は大腸菌などグラム陰性菌が多いが尿培養で菌が

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