脊髄損傷(以下脊損)において排尿障害は生涯にわたって続く可能性が高く,神経因性膀胱に精通した泌尿器科医による定期的フォローアップが理想である.しかし,整形外科医やリハビリテーション科医などが慢性期脊損患者の総合診療的な役割を果たさねばならないこともあるため知っておくべき病態や合併症につき解説する.慢性期排尿管理は,①腎機能維持,②合併症対策,③排尿コントロールの3つが重要となる.
1.腎機能維持
腎不全は慢性脊損患者の死因で常に上位にランクインしている.また,脊損患者は腎機能低下に伴い生命予後が短縮することが報告されている.すなわち,慢性期排尿管理の最大目標は腎不全や腎機能低下を防ぐことである.そのためには後述する神経因性膀胱に起因するさまざまな合併症を最小限に抑える努力が重要となる.ところで脊損患者では麻痺領域の筋量低下に伴いクレアチニン産生量が低下しているため,腎機能障害が生じても血清