【概説】
胸椎部における脊髄症で下肢のしびれで発症することが多く,次第に下肢の麻痺が出現し,病状が進行すると対麻痺(paraplegia)に至ることがある.胸髄症を呈する病態としては,①胸髄が外側から圧迫されるもの(脊髄外病変)と②胸髄自身に病変をきたすもの(脊髄内病変)の2つに分かれる.頚椎疾患,腰椎疾患に比較して頻度は高くはないが,本障害をきたす疾患を念頭に置いて診察を行わないと脊髄障害が進行し,非可逆性になることがあるため注意を要する.
【病因】
上記の①,②に当てはまる疾患を挙げる(図20-4図).
①胸髄症をきたす脊髄外病変:胸椎椎間板ヘルニア,変形性胸椎症,胸椎後縦靱帯骨化症,胸椎黄色靱帯骨化症,椎体骨折による脊髄圧迫,脊椎腫瘍(原発性,転移性),化膿性脊椎炎,結核性脊椎炎,硬膜外血腫,硬膜外腫瘍(悪性リンパ腫など),硬膜内髄外腫瘍(髄膜腫,神経鞘腫など)など
②胸髄症をきたす脊髄内