【疾患概念】
胸腰移行部は応力が集中しやすく,骨粗鬆症性骨折を除いては高エネルギー外傷により脊椎損傷を生じる.不安定性の大きい骨折に対しては手術治療が考慮される.強直性脊椎炎(ankylosing spondylitis;AS)やびまん性特発性骨増殖症(diffuse idiopathic skeletal hyperostosis;DISH)の有無を確認し,これらを認めない場合,不安定性の評価として,Thoracolumbar Injury Severity Score(TLISS)system(Vaccaro AR: Spine 2005)(表20-2図)を用い,治療方針を検討する.ASやDISHに生じた損傷に対しては,転位や後方要素の損傷を認める場合,手術による脊椎の安定化が必要となる.保存治療も含め,いずれの場合も早期に脊椎の安定化を獲得し,全身管理を行いながら,ADL向上のためのリハビリテーションを進め,安定した脊椎,良好なアライメント,自立したADLを目指す.
問診で聞くべきこと
受傷時刻,場所,機転,職業,同居者,既往歴(糖尿病,抗凝固薬または抗血小板薬,免疫抑制薬,脊椎疾患など)を伺い,記録しておく.
必要な検査とその所見
本損傷においては,初診時,救急搬送時に全身状態,脊柱の不安定性,神経障害の有無を評価する必要がある.
(1)合併損傷の有無
詳細は,救急外傷の専門書に譲るが,頭頚部,胸腹骨盤部の理学所見,FAST,末梢血ならびに生化学検査,単純X線,単純または造影CTを評価する.
(2)胸腰部の理学所見,神経所見
脳神経所見,四肢の深部腱反射,徒手筋力テスト,仙椎領域を含めた痛覚と触覚,球海綿体反射,ASIA impairment scale,改良Frankel分類を評価する.
(3)画像評価
単純X線写真の胸椎,腰椎の正面像,側面像を撮影する.胸腰椎の単純CT,