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腰椎・仙椎の解剖
Anatomy of lumbar and sacral spine
江幡 重人
(国際医療福祉大学 教授)

1.腰椎

(図21-1)

 腰椎は5つの椎骨と椎体間の椎間板からなる.前方要素,椎弓根,後方要素からなり,前方要素は椎体,後方要素は椎弓や突起である.腰椎配列は前弯であり,下位腰椎では椎間板の傾斜角度が大きくなる.

【1】椎体

 椎体は楕円柱構造である.椎体の前面と側面は陥凹し,後面中央部でわずかに陥凹している.上下面はほぼ平坦で終板を形成し椎間板と連結する.

【2】椎弓根

 椎体と後方要素をつなぎ,厚い皮質骨を持つ環状構造である.その断面は上位腰椎で縦楕円形であるが,下位になるにつれ横楕円形になる.

【3】椎間関節

 上関節突起と下関節突起からなる.両関節突起により滑膜関節である椎間関節を形成している.上関節突起内側起始部は脊柱管の外側陥凹を形成している.椎間関節面の傾斜角度は矢状面に対して下位腰椎ほど大きくなる.この形状は腰椎にかかる剪断力と回旋力に抵抗し,椎体の前方転位と回旋変位を抑制している.

【4】椎弓

 椎弓は椎体とともに椎孔を形成し,神経組織を保護している.また突起に伝わる外力を椎体に伝達している.

【5】筋突起

 筋突起は棘突起,横突起,副突起,乳頭突起よりなる.それぞれ背筋群が付着し,これらの筋群を介し外力を伝達する.横突起は椎弓根と椎弓の境界から左右側方に出ている.第3腰椎横突起が最長で,第5腰椎横突起はしばしば仙骨と癒合する.

【6】椎間板

 脊椎の可動性と支持性に大きくかかわっている.椎間板は髄核,線維輪,軟骨終板よりなり,中央部に髄核がありその周囲を線維輪が囲んでいる.荷重,衝撃の吸収などの役割を担っている.

【7】靱帯組織

(1)前縦靱帯

 頚椎から腰椎まで全脊柱の前面(椎体や椎間板)を覆っている靱帯である.

(2)後縦靱帯

 椎体と椎間板の後面を覆っている.靱帯腰仙部では椎間板高位では椎間板を覆うように広がるが,下位腰椎ほど靱帯の幅は狭くなる.

(3)黄色靱帯

 椎弓間を結ぶ靱帯で脊

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