診療支援
治療

二分脊椎
Spina bifida
折田 純久
(千葉大学フロンティア医工学センター 教授)

【疾患概念】

 二分脊椎は,胎生期の椎弓の癒合障害により脊柱管の後方の椎弓欠損を生じる先天奇形である.骨の異常とともに脊髄の異常を伴うものを特に総称して,脊椎癒合不全(spinal dysraphism)とよぶ.発生部位は腰仙椎が約80%を占め,髄膜,神経組織などの脊柱管の内容物の脱出を伴う顕在性二分脊椎と,脱出を認めない潜在性二分脊椎がある.臨床症状として,二分脊椎の部位に一致した種々の程度の下肢の麻痺や変形,膀胱直腸障害を合併することがある.成因としては多因子遺伝が考えられているが,葉酸の投与が発生率を減少させることが知られている.

【疫学】

 わが国での脊髄髄膜瘤の発生頻度は,2,000の出産に1人の割合とされる.妊娠初期に葉酸を十分に摂取することで発生類度が減少するとの報告から,1990年代に米国や英国,カナダ,中国などで,妊娠可能性のある若い女性は葉酸を1日に0.4mg摂取するように勧告が出され,以後発生率は減少傾向である.

 わが国ではかつて二分脊椎の発症率が増加傾向にあるとの調査結果を受け,当時の厚生省は「妊娠前4週~妊娠12週まで通常の食事に加え,栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取すれば発症リスクの低減が期待できる(2000年12月)」と通達した.しかし,これにより欧米では神経管閉鎖障害の発生頻度が減少しているものの,わが国では明らかな減少は統計上は確認されていない.わが国における妊婦の葉酸の摂取状況と二分脊椎発生頻度については,今後もさらなるデータが待たれるところである.

【分類と病態】

(1)潜在性二分脊椎(spina bifida occulta)

 椎弓の欠損はあるが正常な皮膚や筋肉で覆われており,髄膜が脊椎外に脱出していないもの.発生部位は腰仙椎部,特に第5腰椎,第1仙椎に多い.単一の脊椎レベルに発生した場合,神経症状を伴うことはほとんどない.皮膚に全く

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