診療支援
治療

慢性腰痛の保存療法
Management of chronic low back pain
渡邉 和之
(福島県立医科大学 准教授)

【疾患概念】

 慢性腰痛は,発症から3か月程度持続した腰痛と定義される.その病態は多岐にわたるが,腫瘍や骨折など客観的に確定診断が得られる疾患が指摘されない腰痛を指す.


問診で聞くべきこと

 腰痛については,痛みの部位,発症の契機,痛みを誘発する動作,安静時痛の有無,および夜間痛の有無を聴取する.下肢症状の合併の有無,併存症の有無,悪性腫瘍の治療歴,過去の骨折歴,骨粗鬆症の治療歴などを併せて確認する.腫瘍,骨折,炎症などのred flagsの除外を念頭において問診する.慢性腰痛では,家庭や職場の問題がストレス要因となり,腰痛の悪化や遷延化に関与している可能性がある.したがって,これらの点についても問診する.また,労災や交通事故との関連も,慢性化の一因となるため留意する必要がある.


必要な検査とその所見

 検査は,重大な疾患を除外してred flagsを鑑別するために行う必要がある.慢性腰痛では,検査で明らかな異常は指摘されないか,所見が認められても症状への関与はない.

(1)単純X線

 pedicle signなど骨融解像や,椎体骨折のないことを確認する.また全脊柱側面像で矢状面アライメントを評価する.後弯がある場合は,成人脊柱変形として治療する.骨棘などの脊椎症性変化や変性すべりなどの所見は頻度が高いが,腰痛との関連はない場合も多い.

(2)MRI

 脊柱管狭窄,骨折,腫瘍性病変,および炎症性所見の有無を評価する.炎症や骨折の検出にはSTIRでの撮像が有用である.

(3)血液生化学検査

 炎症反応,貧血,血清カルシウム値,血清リン値などを評価する.慢性腰痛では明らかな異常所見はない.


診断のポイント

・除外診断である.

・red flagsを確実に除外する.

・特に高齢者が腰背部痛を訴えて受診した場合,骨折の有無に注意する必要がある.


専門病院へのコンサルテーション

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