診療支援
治療

非器質性腰痛
Nonorganic dysfunctional low back pain
加藤 欽志
(福島県立医科大学 講師)

【疾患概念】

 器質的な要因で説明できない慢性化した腰痛は,心理・社会的要因,性格・人格的問題,あるいは精神医学的疾患が関与している可能性がある(「慢性腰痛の保存療法」の項参照).


問診で聞くべきこと

 腰痛の発症原因と疼痛の経時的な変化を順を追って確認する.その際,腰痛の増悪・寛解因子や治療歴,生育歴などを聴取する.社会背景として,家庭内や職場での問題は特に重要である.患者に精神医学的問題や心理・社会的要因が存在しているかどうかのスクリーニングについては,「整形外科患者における精神医学的問題に対する簡易質問表(BS-POP)」(図21-3)が有用である.


有用な身体所見

 病歴や画像検査によりred flagsを除外する(「慢性腰痛の保存療法」の項参照).また,通常の身体所見,神経学的所見に加えて,下記の詐病鑑別テストを追加して評価する.

(1)nonorganic tenderness

 検者が患部の皮膚を軽くつまんだだけで,強い疼痛を訴える.

(2)axial loadingによるsimulation test(軸方向の負荷)

 患者に立位をとらせ,検者が患者の頭部を下方に押さえる.腰痛を訴えた場合を陽性とする.

(3)rotationによるsimulation test(回旋模擬)

 患者に立位をとらせ,患者の両肩と骨盤を同一平面上のままで,検者が他動的に体幹を回旋させる.腰痛を訴えた場合を陽性とする.

(4)Burn's test

 診察台に患者を正座させ,患者が少し腰を浮かせた状態で検者が患者の両足を固定してから,患者に手を床につけるように指示する.腰椎の屈曲ができない場合や,できないと主張する場合を陽性とする.


専門病院へのコンサルテーション

 治療に対する満足度が低い,症状へのこだわりが強い,精神医学的問題の関与が疑われるなどの場合には,集学的慢性疼痛治療(リエゾン・アプローチ)を

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