【疾患概念】
われわれ整形外科医の間においても,梨状筋症候群は疾患名としては古くからよく知られているが,現在でも診断を確定するのが難しい疾患の1つとして認識されており,積極的に治療している病院はごくわずかである.この梨状筋症候群は,そのほとんどが一側の殿部から下肢の疼痛で始まるため,椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患と間違われて治療されることが多いのが特徴として挙げられる.
【病態】
本疾患は,殿部にある股関節の外旋筋の1つである梨状筋が通常とは異なる形状や走行をしているため,付近を走行する坐骨神経を圧迫し下肢にしびれや痛みを生じさせる病気で,骨盤出口部で生じる,いわゆる絞扼性神経障害の1つである.この梨状筋の解剖学的な形態異常である破格については1937年Beatonらが死体の解剖結果より,正常のType AからType Fまで6型に分類し報告している.自験例ではType D,Type Bの順で