【疾患概念】
われわれ整形外科医の間においても,梨状筋症候群は疾患名としては古くからよく知られているが,現在でも診断を確定するのが難しい疾患の1つとして認識されており,積極的に治療している病院はごくわずかである.この梨状筋症候群は,そのほとんどが一側の殿部から下肢の疼痛で始まるため,椎間板ヘルニアなどの腰椎疾患と間違われて治療されることが多いのが特徴として挙げられる.
【病態】
本疾患は,殿部にある股関節の外旋筋の1つである梨状筋が通常とは異なる形状や走行をしているため,付近を走行する坐骨神経を圧迫し下肢にしびれや痛みを生じさせる病気で,骨盤出口部で生じる,いわゆる絞扼性神経障害の1つである.この梨状筋の解剖学的な形態異常である破格については1937年Beatonらが死体の解剖結果より,正常のType AからType Fまで6型に分類し報告している.自験例ではType D,Type Bの順で破格が認められているが,この分類には登場しない形態の破格も経験しており,多くの解剖学的破格が坐骨神経の圧迫を引き起こしていると考えられる.破格の存在しない例では梨状筋と双子筋の間で圧迫を受けていることが多い.
【発症原因】
この病気の発症誘因としては軽微な外傷が最も多く,続いて立ち座りの動作の繰り返しや硬い椅子での長時間の座位,腰椎の手術などが挙げられる.しかし,約6割の例で明らかな誘因となるようなものは存在せず,日常生活のなかで発症され来院されている.
問診で聞くべきこと
(1)疼痛部位の特徴
この病気の臨床症状は殿部から下肢にかけての疼痛で,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の症状と区別がつきにくい.この疾患の疼痛部位の特徴としては通常腰椎疾患では足部の疼痛は足背のみに生じることが大半であるのに対し,この梨状筋症候群では,足底全体に痛みやしびれが生じることが挙げられる.
(2)動作時の特徴
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