【疾患概念】
かつては先天性股関節脱臼と呼ばれていたが,生下時よりも出生後の発育過程で脱臼や亜脱臼に至る例が多く,近年では発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip;DDH)と呼ばれている.股関節を形成する骨盤部分(寛骨臼)より大腿骨頭が関節包内で脱臼している状態から,骨頭の求心性の異常(脱臼~亜脱臼)や臼蓋の形態の異常(臼蓋形成不全)を含んでいる.女児,左股関節に多く,わが国では秋~冬の寒冷時期の出産に多い.
【臨床症状】
1歳以下の乳児における代表的な症状は,股関節が開きにくい(開排制限)ほか,股関節の轢音(クリック徴候),見かけ上の脚長不等,大腿・鼡径部の皺の非対称などがある.歩行開始後(1歳以上)では跛行(Trendelenburg跛行)や脚長不等が主たる症状であり,両側脱臼例では跛行とともに立位・歩行時に腰椎前弯が明瞭であることが多い