診療支援
治療

発育性股関節形成不全
Developmental dysplasia of the hip (DDH)
二見 徹
(滋賀県立小児保健医療センター 病院長〔滋賀県守山市〕)

【疾患概念】

 発育性股関節形成不全(developmental dysplasia of the hip;DDH)は寛骨臼による骨頭の被覆が不足している状態を指し,求心性良好な臼蓋形成不全,求心性が不良な亜脱臼股,軟骨面の接点を有しない脱臼股までを含むスペクトラムを示す.

【臨床症状または病態】

 亜脱臼を伴わない臼蓋形成不全の患者は,小児期では疼痛や跛行を呈さない場合が多い.重度の臼蓋形成不全や亜脱臼が顕著の症例においては,疼痛回避や,股関節周囲筋群の筋力低下に伴う跛行が次第に明らかとなる.なお,初期における疼痛の原因は関節軟骨の変性や関節唇の損傷であることが多い.


問診で聞くべきこと

 既往歴と家族歴を調べる.疼痛がある場合はその発現時期や痛みの性状と疼痛が誘発される肢位や動作を中心に聴取する.行っているスポーツとその内容やレベルの確認も重要である.


診断のポイント

(1)診察

 跛行と歩行時の体幹・骨盤の左右への揺れを観察する.片脚起立でTrendelenburg徴候を調べる.下肢長,大腿・下腿の周囲径と両股関節の可動域を測定する.

 Drehmann徴候とFAI(femoroacetabular impingement,大腿骨寛骨臼インピンジメント)をみるanterior impingement testを行い,Patrick(FABER)テストにより屈曲外転位での可動域制限や疼痛の有無を確認する.

(2)画像診断

 前後像の単純X線像が基本である.側面像は開排位でのLauenstein像を用いる.軸射での側面像では骨頭が坐骨と重なり,Perthes病や大腿骨頭すべり症の初期変化を見逃しやすい.前後像で臼蓋荷重部の硬化部(sourcil)外側点を基にCE(center-edge)角を計測する(modified CE角).Y軟骨が閉鎖前では臼蓋角を,閉鎖後はSharp角を計測する(45°

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