【疾患概念と発症要因】
大腿骨近位成長軟骨板が負荷される荷重に耐え切れず,骨端が骨幹端に対して後内方に転位する(すべる)疾患である.小児の成長が盛んなgrowth spurtの時期を中心に発症する.本症の発症には複数の要因が考えられている.古典的には内分泌学的な異常が指摘され,成長ホルモンと性ホルモンの不均衡,下垂体機能低下症に対する成長ホルモン補充療法などに関連した発症の報告があるが,実際の臨床例で明らかな内分泌学的異常を認めるものは多くない.次に力学的な要因として,肥満とスポーツ活動が重要と報告されている.成長過程で力学的に脆弱化した成長軟骨板に対し,体重増加やスポーツ活動による力学的負担が急激に増加することが重要な発症要因となる.また,股関節の形態学的要因として,大腿骨頚部の前捻減少~後捻,骨端線の後方傾斜,寛骨臼の前方~外側被覆が大きいなどの形状がリスクとなるという報告がある.