【疾患概念】
大腿骨頚部骨折より遠位で転子部を中心とした部位の骨折である.主として高齢者の転倒による低エネルギー損傷の結果として生じるが,まれに交通事故や労働災害などの高エネルギー損傷の結果として生じることもある.
【頻度】
わが国の大腿骨頚部/転子部骨折の年間発生数は2012年では175,700例で,男性が37,600例,女性が138,100例であった.発生率は40歳から年齢とともに増加し,70歳を過ぎると急激に増加していた.高齢者での発生率は男性より女性が高かった.2009~2014年の患者数の増加は男性では85~89歳,女性では90~94歳で最も大きかった.
日本整形外科学会(日整会)による大腿骨近位部骨折全国調査(施設回答率68.4%)では,2018年の1年間で大腿骨頚部骨折の発生数は52,271例(男性11,655例,女性40,577例,登録時男女不明もあり)である.
【骨折型分類】
AO/OTA分類が広く使用されている.本分類は,転子部骨折をType Aとし,これらを3群に細分する.Type A1は単純な転子部の骨折.Type A2は多骨片骨折で,外側壁幅が20.5mm以下で外側壁骨折のリスクを有する.Type A3は,大転子と小転子の間に骨折線を有する逆斜骨折である(図23-12図).A1を安定型,A2,A3を不安定型としている
また3D-CT画像を用いた中野分類(図23-13図)も使用されている.一次骨折線が小転子から大転子へ近位に向かい斜めに走る型をTypeⅠ,一次骨折線が小転子より大転子遠位にかけて横あるいは遠位に向けて走る型をTypeⅡと分類し,さらにTypeⅠは4-part theoryにより骨頭部,大転子部,小転子部,骨幹部の4 segmentの組み合わせで9型に分類される.TypeⅠで後方内側(小転子部)に第3骨片があり,後内側の支持性がないものを不