【疾患概念】
下肢の絞扼性神経障害は見逃されることの多い疾患として知られている.しかし神経圧迫除去手術の10%は下肢の絞扼性神経障害であり,まれなものではない.整形外科医においても上肢の絞扼性神経障害はよく知られているが,下肢は馴染みの薄い臨床医が多い.その理由の1つは血管系の障害のような訴えがあるためである.この項では下肢の絞扼性神経障害のうちでも比較的頻度の高い疾患について記載する.
1.総腓骨神経の絞扼性神経障害
【1】解剖学的因子
総腓骨神経は浅層に位置しているという解剖学的な特徴により,外的な要因で障害を受けやすいことが知られている.特に膝窩部から腓骨頭部にかけては皮下に位置しているため触診も容易であるが,その直ぐ末梢部では深部表面に腓骨頚部が存在し,2つの長腓骨筋頭から形成されるトンネル内に進入している.同部は最も絞扼を受けやすい部位である.もう1つの絞扼部は腓骨頭から1~2cm中