【疾患概念】
最大の長管骨骨折であり,交通事故や労災事故などの高エネルギーによる骨折と,高齢者によくみられる転倒などの低エネルギーによる骨折に二分される.前者は近年交通事故などの減少により少なくはなっているが,骨折部のみならず頭部,腹部損傷などを合併していることがあり,その初期治療には注意を要する.一方,後者は高齢者特有の骨粗鬆症による骨脆弱性とさまざまな合併症を有しており,手術に際して十分な評価が必要である.
【臨床症状】
大腿部における激痛,高度の変形,腫脹,下肢短縮を認める.大量出血にてショック状態を呈する場合もある.
問診で聞くべきこと
受傷機転が非常に重要である.高エネルギー外傷では本人から情報を得ることが困難な場合が多いため,受傷現場の状況や関係者よりできる限り情報収集に努めることが重要である.他方,高齢者では受傷前の活動度や併存傷病,認知症などの有無も治療方針の判断材料となる.
必要な検査とその所見
(1)画像診断
単純X線での確認が基本であるが,高エネルギー外傷の場合には多部位にわたる撮影や全身CTの撮像が必要となる.
(2)生理・検体検査
出血に対する循環動態の検査として血液検査や心電図検査・超音波検査などを行い,点滴にて輸液,輸血ルートを確保する.
(3)理学的検査
開放創の有無,骨折以遠の循環障害のチェック,神経損傷の有無を確認することが必要である.
診断のポイント
大腿骨骨幹部骨折はその付着する筋肉により大きく転位する.骨折形態によってはピンホール上の開放創を合併することがあり,開放骨折の有無のチェックには注意が必要である.
治療方針
保存治療は全身状態が手術に耐えられない場合や小児患者以外は適応とならない.
一般的には全身状態が重篤でなければ早期の手術が薦められる.また全身状態の管理が優先される場合には創外固定などで骨折部の安定化をはかり(図25-4a図),回復を