【疾患概念】
大腿骨遠位部骨折は交通事故などの高エネルギー外傷,または高齢者の軽微な転倒など低エネルギー外傷のいずれにも発生し,近年では大腿骨ステム周囲骨折ならびに人工膝関節周囲骨折などのインプラント周囲骨折の増加とあわせて,治療に難渋することが多い骨折である.関節近傍骨折であるため正確なアライメントの再建と,関節内骨折の場合は関節面の解剖学的再建が必要であり,多くの症例で強固な固定による早期運動を目的とした手術療法が適応となる.
【病態・臨床症状】
大腿骨遠位部,膝関節の腫脹や疼痛,骨折部の異常可動性,関節内血腫の貯留を示し,ほとんどの症例で自動運動や荷重は不可能である.骨折部では大腿四頭筋とハムストリングスの牽引力により短縮が生じ,内転筋と腓腹筋の牽引力により内反,伸展変形が起こる.高エネルギー損傷例では膝窩動脈損傷にも注意が必要である.
【病型・分類】
AO/OTA分類が手術方法の選択に有用であり,広く使用されている(図25-6図,術前画像参照).なお本分類は2018年に修正,改訂された.人工膝関節周囲骨折に対しては転位と弛みを考慮したLewis-Rorabeck分類が代表的である.
問診で聞くべきこと
受傷機序の詳細な聴取とともに,受傷肢位,疼痛部位などを問診する.職業,日常活動性の程度や自立度の確認も重要である.
必要な検査とその所見
単純X線検査は必須であり,正面および側面の2方向に加え,骨折を疑う場合は両斜位を追加する.健側との比較も重要である.
さらにMPR再構成像や3D像を含めたCTによる評価は関節内骨折には必須であり,関節面転位の評価や手術計画立案に有用である.血管損傷が疑わしい場合は超音波Doppler検査に加え,造影CTや動脈造影を考慮する.
鑑別診断で想起すべき疾患
鑑別診断として下腿骨折や膝蓋骨骨折,膝靱帯損傷や半月板損傷が挙げられる.またこれら疾患との合
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