診療支援
治療

大腿四頭筋,ハムストリングの断裂
Muscle rupture of quadriceps and hamstrings
中川 匠
(帝京大学 教授)

【疾患概念】

 筋損傷はトップレベルでスポーツ競技を行うアスリートに発生し,この怪我が原因で競技を休止することによる損失は,アスリート本人にとってもチームにとっても看過できない問題である.ハムストリング損傷の頻度が最も高く,陸上の短距離競技,サッカー,アメリカンフットボールなどのスプリント競技に多く,大腿四頭筋損傷はキッキングスポーツで筋組織が伸長されることにより生じる.一般に筋損傷を受傷したアスリートやチームは可及的早期のスポーツ復帰を希望するが,復帰後に再損傷を生じる危険性が高く,再損傷を起こすとさらに長期間競技の離脱を余儀なくされるので,復帰の判断には細心の注意が必要である.

【病態】

 筋損傷は筋線維と筋肉周囲を覆う筋上膜(筋膜)との境界部分や,筋腱移行部の腱・腱膜などの生体力学的特性の異なる組織同士の接合部で発生することが多い.MRI画像などで筋組織に異常所見のない軽症なものから,付着部剥離や腱断裂して連続性が損なわれている重症まで,重症度は大きく異なる.


問診で聞くべきこと

 受傷機転があったかどうか,スポーツの活動レベル,ポジション,復帰目標などを聴取する.


必要な検査とその所見

 一般にX線やCT検査では異常がみられないが,骨化性筋炎を合併したケースではこれらの検査を行う.軟部組織損傷であり超音波(エコー)検査とMRI検査が有用である.エコーはポータブル機種もあり,現場での評価や筋組織の収縮に伴う評価が可能な点や,治癒過程を経時的に安価に観察できる利点がある.一方で,患部の描出には一定の経験と技術が必要なこと,エコーでの描出範囲に限界があるなどの欠点もあり,正確で再現性のある病変部の評価にはMRI画像が優れている.MRI画像では筋組織の浮腫,出血,筋腱移行部の連続性の途絶,筋内腱の走行の乱れ,骨化病変の観察が可能であり,損傷部位やその範囲を評価することにより治療方針を決定

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