診療支援
治療

関節軟骨損傷
Articular cartilage injury
中村 憲正
(大阪保健医療大学 教授)

【疾患概念】

 関節軟骨は関節の荷重伝搬,円滑な運動に寄与する組織である.組織内の70~80%を水分が占め,血管,神経,リンパ管組織が存在しないという特徴がある.そのために軟骨が損傷,変性しても軽度なものでは痛みを伴わず無症状であり,損傷が進行して初めて自覚されるというケースが多い.しかもその段階においても,血行を介する通常の組織修復機転は働かず,難治性となることが多い.軟骨損傷が重症化すると変形性関節症へと進行するリスクが高く,その段階以前に治療を行うことが重要である.

【臨床症状または病態】

 軟骨損傷はその損傷の深さにより分類される(国際軟骨再生・関節温存学会;ICRS分類)が,その深さが軟骨深層まで達するようになると疼痛,引っ掛かり,関節水腫などの症状を認める.損傷軟骨片が母床から遊離するような場合には,嵌頓症状をきたす場合もある.


問診で聞くべきこと

 軟骨損傷は1回の外力により生ずるものもあるが,静的あるいは動的な関節内の力学環境の異常の蓄積により,つまりオーバーユースにより生ずるものがある.症状の発症時以前に遡る外傷歴や,関節不安定性,アライメント異常などの身体素因も含めた注意深い問診が必要である.


必要な検査とその所見

 X線では軟骨損傷自身は描出されないが,関節裂隙の狭小化やアライメント異常の有無などを掌握するうえで必要である.

 MRIは診断に不可欠である.プロトン密度強調像,脂肪抑制プロトン密度強調像が損傷部分の描出に優れる.また軟骨だけではなく骨髄浮腫像は軟骨損傷を示唆するものであり,留意すべきである.


診断のポイント

 臨床症状と画像診断から総合的に判断することが望ましい.


治療方針

 血行を介した治癒機転を望むことができないために,保存療法の効果は不確実であり,一般には外科的治療が必要となる.術式には骨髄よりの細胞の集積をはかるドリリング,マイクロフラクチャー法,荷重の

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