【疾患概念】
膝靱帯損傷の多くは,前十字靱帯(anterior cruciate ligament;ACL)損傷や内側側副靱帯(medial collateral ligament;MCL)損傷といった,単独靱帯損傷である.膝複合靱帯損傷は,より高エネルギー外傷で生じる複数の膝関節内外の靱帯損傷である(表26-2図).その病態は膝関節脱臼・亜脱臼とほぼ同じであり,骨折などの多発外傷を伴うことも多い.このため他部位の治療が優先されることがあり,初期治療が遅れることもある.複合靱帯損傷を診る場合には,常に膝脱臼が生じた可能性を考慮し,経時的に下肢の血流評価を行わなければならない.
【病態】
膝複合靱帯損傷は,外力により膝関節が(亜)脱臼後に整復された状態と考えられ,その臨床所見は,著明な変形を認めないことを除けば,膝関節脱臼と同様である.膝関節の腫脹,疼痛,皮下出血を認め,損傷された靱帯により種