【疾患概念】
胎生期の膝関節は複数の膜組織により分画されている.その遺残物が,前十字靱帯,膝蓋上嚢,内・外側の各滑膜ヒダである.これらの多くは無症状であるが,内側滑膜ヒダ(medial synovial membrane;MSM)はまれに症候化する.タナ障害とは,以下の機序でMSMが関節包を牽引・刺激した病態である.
①過負荷による炎症でMSMの形状が変化し,大腿骨内側顆にbowingする.
②膝蓋大腿関節〔patellofemoral(PF)関節〕の拘縮のため膝蓋後圧が上昇し,MSMがPF関節にインピンジメントする.
若年者のMSMは光沢のある絹色の薄い膜で,この形態がタナである.タナは経年齢的に外観が変化し,徐々に脂肪性の厚い膜となる.若年者での報告が多いためタナ障害と呼称されているが,他形態のMSMも上記機序で症候化する.
【臨床症状】
階段昇降・立ち上がり時に生じる膝蓋骨周囲の疼痛を主訴とする.安静時・歩行時の痛みは軽微である.轢音は本疾患に特有な所見ではない.
【鑑別疾患】
タナ障害の発生頻度は低い.まず類似症状を呈する以下の疾患を考慮する.
①癒着性関節炎.外傷・手術後に発症する.まれな疾患ではない.
②patellofemoral pain syndrome(PFPS).外傷歴を欠くことが多い.膝蓋骨の可動性の低下と,屈曲角度の顕著な左右差を呈する.発生頻度は20%前後である.
診断のポイント
①画像診断にはMRIを使用する.MSMは関節包と内側顆の間に位置するため,その描出には関節水腫による関節包の拡張が不可欠である.水腫を欠く場合,生理食塩水薬50mLを関節内に注入すると良好な結果が得られる.
②榊原分類C,D型のMSMを検出し,その症候性が確認できると確定診断となる.しかしHughston Plica Testなど,現行の検査法は感度・再現性に問題があり,確定診断をMSM
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