【疾患概念】
胎生期の膝関節は複数の膜組織により分画されている.その遺残物が,前十字靱帯,膝蓋上嚢,内・外側の各滑膜ヒダである.これらの多くは無症状であるが,内側滑膜ヒダ(medial synovial membrane;MSM)はまれに症候化する.タナ障害とは,以下の機序でMSMが関節包を牽引・刺激した病態である.
①過負荷による炎症でMSMの形状が変化し,大腿骨内側顆にbowingする.
②膝蓋大腿関節〔patellofemoral(PF)関節〕の拘縮のため膝蓋後圧が上昇し,MSMがPF関節にインピンジメントする.
若年者のMSMは光沢のある絹色の薄い膜で,この形態がタナである.タナは経年齢的に外観が変化し,徐々に脂肪性の厚い膜となる.若年者での報告が多いためタナ障害と呼称されているが,他形態のMSMも上記機序で症候化する.
【臨床症状】
階段昇降・立ち上がり時に生じる膝蓋骨周囲の疼痛を主訴