【疾患概念】
1904年にHoffaによって報告された.膝蓋下脂肪体の過形成や瘢痕形成を生じることによって,膝前面痛をはじめとする関節の不定愁訴を生じる疾患である.
【頻度】
主に30~40歳代に好発し,男性より女性に多い.リスク因子として関節弛緩性,膝蓋大腿関節の形成不全,反張膝がある.
【臨床症状または病態】
原因は膝前面に対する外傷や繰り返される機械的刺激によって膝蓋下脂肪体に生じる出血や炎症である.膝蓋下脂肪体の腫脹を伴い,膝前面に限局性の圧痛がある.階段昇降により増悪する.膝関節の可動域制限や関節水腫を認め,膝蓋下脂肪体を触知することもある.
問診で聞くべきこと
膝関節前方への外傷歴や繰り返しの刺激の有無について問診する.
必要な検査とその所見
MR画像が有用であり,膝蓋下脂肪体の浮腫像や腫脹を認める.進行した症例では単純X線像で膝蓋下脂肪体に一致して石灰化を認めることがある.
鑑別診断で想起すべき疾患
膝蓋大腿関節症,離断性骨軟骨炎,膝蓋骨不安定症やタナ障害など膝前面に症状を引き起こす疾患を鑑別すべきである.
診断のポイント
仰臥位で膝関節屈曲位から,膝蓋腱の内外側を用手的に圧迫しながら膝関節を伸展することで,膝蓋下部に疼痛が誘発される(Hoffa sign).
専門病院へのコンサルテーション
保存療法に抵抗性の場合には膝関節専門医へのコンサルテーションが望ましい.
治療方針
保存療法を第1選択とする.
治療法
保存療法として消炎鎮痛薬の内服,局所の安静,温熱療法などの物理療法や装具療法を行う.奏効しない場合には局所へのステロイド注射を施行する.保存療法に抵抗性の場合には関節鏡視下膝蓋下脂肪体の部分切除を選択せざるを得ないこともある.
合併症と予後
膝蓋下脂肪体の切除を行った場合の手術成績は明らかにされていない.
患者説明のポイント
膝関節前面への機械的な刺激を避けることを指導する.