【疾患概念】
ジャンパー膝は,ジャンプ・ランニング動作を繰り返すスポーツ選手に好発する膝伸展機構のオーバーユースによる代表的な膝スポーツ障害である.好発部位は,膝蓋腱の近位深層やや内側よりであり,次いで大腿四頭筋腱遠位付着部である.病態や治療の一貫性を担保するために,本項では「膝蓋腱症」について述べる.
【頻度】
スポーツ選手の膝蓋腱症の発生率は14.2~44.6%と報告されており,男性が女性の2倍多い.
【病態】
膝蓋腱の微小断裂,浮腫,ムコイド変性などと報告されているが,現在でも不明な点も多い.痛みの発生源は膝蓋腱付着部深層の摩耗,断裂と周囲滑膜組織の反応と言われている.
【臨床症状】
膝蓋腱近位部中央から内側に圧痛,腫脹と局所熱感を呈する.ジャンプの着地やスクワット動作など大腿四頭筋遠心性収縮時に疼痛を強く訴える.
問診で聞くべきこと
外傷の有無,スポーツの種類とポジション,安静時痛の有無,発症からの期間.
必要な検査とその所見
単純X線検査では,慢性例で膝蓋腱内の石灰化や膝蓋腱付着部の膝蓋骨不整像などの所見を呈することはあるが,通常異常所見は認めない.超音波検査では膝蓋腱が肥大,低輝度化し,fibrillar patternが開大または消失する(図26-20図).Dopplerモードでは病変部周囲や膝蓋下脂肪体に血流シグナルの増加を認めることがある.MRIでは,T2強調像で腱内に高信号領域を伴った肥厚像を呈する(図26-21図).
診断のポイント
膝前方部痛を主訴とするスポーツ選手で膝蓋骨下極から膝蓋腱付着部に圧痛を認め,踏み込みやジャンプの着地で疼痛を訴える.病初期では,ウォームアップ後には症状が消失することがあり,選手は痛みを感じながらもスポーツ活動を継続し,慢性化してから病院を受診することも多い.膝蓋骨疲労骨折は,膝蓋腱症と非常によく似た症状を呈するため,鑑別が必要である
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