【疾患概念】
腸脛靱帯は大腿筋膜張筋とともに上前腸骨棘に起始し,大腿外側を大腿筋膜として下行し,大腿骨顆部では靱帯状となり脛骨Gerdy結節に停止する.腸脛靱帯炎は,海兵隊員に生じた膝外側痛をiliotibial band friction syndromeとして報告されたのが最初であるが,現在では持久系スポーツに好発するオーバーユース障害として広く知られている.ランニングに起因するものはrunners kneeとも称され,その発生頻度は1.6~12%と報告されている.膝伸展位で大腿骨外側上顆の前方に位置する腸脛靱帯が,屈曲によって後方へ移動し外側上顆を乗り越える際の機械的刺激(friction)が病態と考えられてきた.腸脛靱帯が外側上顆の直上にくる膝屈曲20~30°はimpingement zoneと称され,ランニング中は踵接地時に屈曲角度がimpingement zoneとなるため疼痛