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トピックス 関節軟骨の再生医療
妻木 範行
(大阪大学大学院 教授(生化学・分子生物学講座)/京都大学iPS細胞研究所 特定拠点教授)

 再生医療の定義は「細胞を積極的に活用して,組織・臓器の機能障害の再生をはかる」こととされている.関節軟骨は修復能に乏しく,損傷を受けると自然には治らずに変性が進行して,変形性関節症を含む関節の機能不全状態へと進行する.そこで損傷部に再生治療で介入し,治癒させることが期待されている.

軟骨が治らない理由

 軟骨が損傷を受けると治りにくい理由は,軟骨の構造に帰する.軟骨は,豊富な軟骨細胞外マトリックスに軟骨細胞が埋もれた構造をもつ組織である.軟骨マトリックスが荷重に抗して関節運動を担っている.軟骨細胞と軟骨マトリックスは持ちつ持たれつの関係で,軟骨細胞が軟骨マトリックスを作り,軟骨マトリックスは軟骨細胞に環境を与えて維持する(図26-2).軟骨細胞から軟骨マトリックスを除去すると,軟骨細胞は変質して軟骨マトリックスを作れなくなる.関節軟骨が損傷すると軟骨マトリックスも失われるため,そこに細胞だけが供給されても軟骨を作る過程が始まりにくい.

関節軟骨の再生治療

①マイクロフラクチャーは,軟骨下骨を穿孔して,骨髄内に存在するとされるプロジェニター細胞を損傷部に取り入れるものである.軟骨マトリックスがないところに細胞のみが導入されるので,作られる組織は軟骨ではなく,瘢痕様組織を含む線維軟骨である.

②自家軟骨細胞移植は,少量の関節軟骨を採取し,軟骨細胞の数を増やすために軟骨マトリックスを除去して軟骨細胞のみを取り出して培養してから,損傷部に移植するものである.軟骨マトリックスを除去するため,軟骨細胞は変質するので正常な軟骨で修復することは難しい.わが国で保険収載されているジャック®では,軟骨細胞をⅠ型コラーゲンゲルに包埋することで移植部に細胞を均等に分布させることを意図している.

③モザイクプラスティーは,軟骨を組織のまま損傷部に移植する方法で,軟骨による修復を可能にする.移植する面積と同

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