診療支援
治療

脛骨・腓骨骨折
Fracture of the tibia and fibula
佐藤 徹
(岡山医療センター 診療部長〔岡山市北区〕)

【疾患概念】

 脛骨内側面は皮下に存在するため,開放骨折を生じやすく,軟部組織損傷やコンパートメント症候群の発生率も高い.膝関節および足関節は変形癒合に対する許容範囲が狭いため,下肢全体のアライメントを考慮した適切な治療を必要とする.

【臨床所見と病態】

 ほとんどの症例で明らかな外傷機転があり,骨折部の疼痛,腫脹,圧痛(Malgaigne圧痛),下腿の変形を認め,歩行不能となる.骨折部の異常可動性と変形から診断は容易である.受傷原因は交通外傷などの高エネルギー外傷で直達外力が脛骨に働く場合と,脛骨に対し介達外力が屈曲方向あるいは捻転として働くことによって生じる場合に大別される.高エネルギー損傷例では開放骨折やコンパートメント症候群や神経血管損傷の合併に注意する必要がある.疲労骨折もしばしばみられる.


問診で聞くべきこと

 受傷機序,疼痛部位とその性状,既往症と服薬歴,受傷前のADL状態が治療方針の決定に重要である.


必要な検査

(1)単純X線

 膝関節および足関節を含む下腿2方向撮影を行う.必要に応じて両斜位撮影を追加する.

(2)CT(造影を含む)

 骨折線が関節面近傍に及んでいる可能性がある場合,MPR-CTが撮影されるが,骨幹部骨折のみでは保険適用外である.血管損傷を疑う場合,造影CTあるいは血管造影が必要となる.


診断のポイント

 X線上は主骨折線の部位と骨折型を診断すること,および骨折線が関節面に及んでいるかどうかを判断する.脛骨骨幹部骨折はたとえ閉鎖性骨折であっても何らかの軟部組織損傷を伴っていることが多く,その程度を評価することが重要である.まず,腫脹と挫傷の部位と程度を評価する.骨折による水疱形成は軟部組織の広範かつ重篤な腫脹の徴候であり,皮膚のしわが消え,光沢を帯びている場合はさらなる外科的侵襲によって腫脹増大の可能性が高いために,無理な手術を行うべきではない.創外固定などで骨

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