診療支援
治療

先天性垂直距骨
Congenital vertical talus
北野 元裕
(国立病院機構大阪医療センター 医長〔大阪市中央区〕)

【疾患概念】

 生下時より高度外反扁平足を呈するまれな先天性足部疾患である.距骨が足底面に対して垂直に近く底屈し,舟状骨が距骨の背側に脱臼しているため,後足部は尖足位,前足部は背屈回内位となり,重症例では舟底足変形を呈する.頻度は1万人に1人程度とされ,約半数が両側例である.原因は不明だが特発性が約半数で,他は二分脊椎,先天性多発性関節拘縮症,染色体異常などに伴うものである.

【病態】

 舟状骨が距骨の背側に脱臼し,距骨が底内側に向いて垂直位となる.踵骨は底屈,外反し後足部は尖足位となりアキレス腱の緊張も高度である.脱臼した距舟関節周囲の高度拘縮と前脛骨筋腱,長母趾・長趾伸筋腱,長短腓骨筋腱の緊張のため前足部は背屈回内位となり,足関節底屈制限は著明である.


診断のポイント

 生下時にみられる高度外反扁平足,舟底足変形で,踵は小さく後方に踵骨を触れず,アキレス腱の緊張,足関節底屈制限が著明であれば本症を疑う.胎内姿勢による生理的外反踵足も時に伸筋腱緊張,足関節底屈制限を呈するが,足根部は柔軟でアキレス腱の緊張もなく,鑑別は比較的容易である.X線検査では幼児期まで舟状骨が未骨化で距舟関節脱臼は描出されないが,距骨が脛骨軸に近い垂直位であることが特徴的である.


治療方針

 手術療法が必要で,従来は広範囲軟部組織解離,腱延長にて距舟関節脱臼整復,尖足矯正を行い,足関節底屈を得る手術が一般的であったが,術後瘢痕による高度足部拘縮や変形再発が問題であった.最近は低侵襲なDobbs法が一般的で,長期成績はまだわからないが短期的には良好な矯正が得られるようになった.内反足に対するPonseti法とは逆方向に前足部底屈,内がえしで5,6回の石膏ギプスによる矯正後,アキレス腱皮下切腱と観血的距舟関節整復,伸筋腱などの延長を行う.変形再発防止のため,成長終了まで短下肢装具や足底装具などの継続を行う.




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