診療支援
治療

多趾症, 合趾症
Polydactyly, Syndactyly
藤井 宏真
(奈良県立医科大学 学内講師)

1.多趾症

【疾患概要】

 多趾症は,足趾奇形のなかで最も多い奇形で,胎生期に足趾が分離する時期(胎生5~8週)に何らかの異常があり本来より多く分離した状態である.人種的には黒人に多く,次いでアジア系に多い.わが国での発生率は2,000人に1~2人.多くは孤発例で片側のみにみられるが,13トリソミー症候群,Laurence-Moon-Biedl症候群,Greig頭蓋多合指症候群,Carpenter症候群,VACTERAL,Ellis-van Creveld症候群など先天性疾患の一症候として発症することもある.家族性では,主に対称性,両側発生が多く,常染色体優性遺伝形式をとる.これまでの研究でさまざまな原因遺伝子が発見されているが,多趾症単独例では,GLI3ZRS/SHH遺伝子などの関連が示されている.

【病型,分類】

 これまで形態解剖学的な分類や発生学,遺伝子学的分類などさまざまな病型分類が提唱(Venn-Watson分類,Temtamy-McKusick分類,Watanabe分類,SAM systemなど)されているが,一般的に第2趾から中枢に引いた線を中心として,過剰趾が第1趾側にある場合を軸前性(pre-axial),第5趾側にある場合を軸後性(post-axial),第2,3趾にある場合を中心性(central)とよぶ.一般的には黒人に軸後性多趾症が多く,アジア(香港,フィリピンなどの報告例)では軸前性が多いとされるが,わが国では軸後性多趾の割合が多く,第5趾の外側に過剰趾(いわゆる第6趾)がある症例が多い.

【臨床症状】

 出生時に外見の異常としてすぐに認識されることが多いため,生後すぐに来院されることが多い.多趾を診断する場合,身体所見上で軸前性か軸後性の判断はできても正確に分離している部分を示すことは難しい.この時点では,分離している部位を予測しながら触診し足趾の自動

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