【疾患概念】
強剛母趾は,母趾中足趾節間(metatarsophalangeal;MTP)関節の変形性関節症で,同部の疼痛,可動域制限を特徴とする疾患である.
【病態】
強剛母趾の本態は変形性関節症であり,その主な原因は繰り返される微小外傷の繰り返しと考えられている.本症に進展しやすい形態的素因として第1中足骨の挙上,第1中足骨が第2中足骨より長いことなどが挙げられている.
【臨床症状】
発症機序は繰り返される微小外傷であり,好発年齢は中高年が多く,母趾背屈時の痛みが特徴的である.
歩行姿勢を観察すると,前足部回内の動き(蹴り出しの際に母趾側に荷重中心が偏り,2から5趾をうまく使えていない)であり,2から5趾を使えるようにすると痛みは減少する(図28-9図).
問診で聞くべきこと
痛みは母趾MTP関節の背屈時に生じることが特徴的であるため,歩行中,特に蹴り出しの際に痛みが生じるかどうか,女性であればヒールの高い靴を履くと痛みが出るか,履く靴によって(靴底の構造の違いなど)痛みの出方に違いがあるか,などを聞くことが大切である.
必要な検査とその所見
単純X線写真で関節症変化の有無を確認できれば診断は確定する.重症度によるHattrup&Johnson分類があり,治療計画に有用である.
鑑別診断で想起すべき疾患
痛風による母趾MTP関節炎や外反母趾が挙げられるが,前者は血液検査で,後者はX線診断で鑑別は容易である.多くはないが外反母趾変形との合併例もなかには存在する.
治療方針
基本的には保存療法が主体である.薬物療法,運動療法,装具療法があるが,発生機序から歩行時における母趾への荷重の偏りを少なくすることが重要であり,普段履く靴の指導が大切である.
保存療法で効果がない場合に手術治療が選択される.関節温存手術と非温存手術に大別される.
治療法
主に保存療法に関して述べる.蹴り出しの際に靴底