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治療

成人期扁平足(後脛骨筋腱機能不全症)
Adult acquired flatfoot deformity [Posterior tibial tendon dysfunction (PTTD)]
生駒 和也
(京都府立医科大学大学院 准教授)

【疾患概念】

 足のアーチ構造が破綻し,土踏まずが消失して扁平になった足部を総称して扁平足という.成人期扁平足(adult acquired flatfoot deformity;AAFD)は成人期に扁平足が生じる,もしくは進行する疾患である.後脛骨筋腱機能不全症(posterior tibial tendon dysfunction;PTTD)はAAFDの主たる病因である.

【頻度】

 中年以降の女性や肥満体型の人に多い.足関節周辺の外傷や手術の既往,スポーツなどによるオーバーユース,小児期・思春期扁平足の既往などが誘因になる.

【病型・分類】

 病期分類としてMyersonの分類が用いられる.Stage 1は後脛骨筋腱の損傷はあるが,扁平足を生じていない状態,stage 2は徒手的に変形矯正が可能(可撓性あり)な扁平足変形,stage 3は徒手的に矯正が不可能(可撓性なし)な扁平足変形とされ,stage 4では扁平足変形に外反型変形性足関節症を伴う.Stage 2として分類される変形の範囲が広いため,stage2を前足部外転および回外変形の程度と,内側列の不安定性の程度で細分化する方法も報告されている.

【病態】

 後脛骨筋腱が変性・断裂し,後脛骨筋の内側縦アーチを動的に維持する作用が破綻する.これにより内側縦アーチを静的に維持しているバネ靱帯や足底の諸靱帯が伸長され,アーチ構造が破綻し,扁平足変形をきたす.

【臨床症状】

 足関節内果後方から下縁に走行する後脛骨筋腱に沿って,疼痛と腫脹がみられる.変形が進行した例では,踵骨外反に伴って足関節外側,特に足根洞や腓骨遠位部に荷重時痛や歩行時痛がみられる.

 局所所見としては,後脛骨筋腱に沿った圧痛と足部内側縦アーチの低下を認める.進行期では足根洞や腓骨遠位部での圧痛と腫脹が出現する.Too many toes sign(後方から見て足趾が多く

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