診療支援
治療

足関節・距骨下関節脱臼
Dislocation of the ankle and subtalar joint
原口 直樹
(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 副院長)

【疾患概念】

 骨折を伴うことなく足関節あるいは距骨下関節が脱臼するもので,スポーツ外傷や交通外傷で発生する.

【頻度】

 足関節脱臼・距骨下関節脱臼ともに非常にまれな外傷である.特に足関節脱臼は足関節の外傷全体の0.07%との報告があり,20~30歳台の男性に多く発生する.

【病型・分類】

 足関節ではすべての方向に脱臼しうる(後内方,内方,後方,外方,上方,前方)が,後内方脱臼が最も頻度が高く,次いで内方脱臼が多い.約半数が開放性脱臼である.距骨下関節では内方脱臼が多く,しばしば距舟関節脱臼を伴う.

【臨床症状】

 足関節の高度の変形を認める.血管の圧迫により,整復前に一時的な阻血を認めることがある.整復後は足関節周囲に腫脹や皮下血腫を認める.高エネルギー外傷では開放創を認め,骨が露出する.


問診で聞くべきこと

 受傷の場所と時間,開放性脱臼であれば受傷した場所の汚染の状態などを聞く.


必要な検査とその所見

 単純X線写真で脱臼の方向と骨折の合併の有無を評価する.足関節・距骨下関節脱臼ともに,CTを撮影して細部の骨損傷を確認する(図28-18).


診断のポイント

 足関節脱臼では単純X線像により脱臼の診断は容易であるが,足背動脈や後脛骨動脈の拍動および足部の知覚を確認する.脱臼整復前と整復後に毛細血管再充満時間(capillary refilling time)を計測する.脱臼の整復後は足関節中間位でX線写真を撮影し,関節の適合性を評価する.


専門病院へのコンサルテーション

 血管損傷や高度の軟部組織損傷を合併する場合は,専門病院へ転送する.


治療方針

 緊急に徒手整復してギプスシーネ固定を行う.開放性の脱臼は洗浄・デブリドマンを行い整復,ギプスシーネ固定を行う.閉鎖性・開放性ともに靱帯の修復は一般に必要ない.軟部組織の合併症がなければ,腫脹が軽減する受傷後約2週間程度で短下肢ギプス固定に変更する.外

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