診療支援
治療

アキレス腱付着部症
Insertional Achilles tendinopathy
松井 智裕
(済生会奈良病院 部長〔奈良市〕)

【疾患概念】

 アキレス腱の踵骨付着部に生じる疼痛,腫脹,運動機能障害を症状とする障害である.アキレス腱が踵骨に付着する部位に牽引ストレスが加わることで生じる狭義のアキレス腱付着部症と,足関節運動により踵骨後上隆起とアキレス腱が繰り返し接触することで生じる踵骨後部滑液包炎に分けて考えられるようになってきているが,実臨床では両者が合併していることも多い.

【臨床症状・病態】

 長距離ランナーやジャンプ競技などのスポーツ選手に比較的好発する.アキレス腱付着部の疼痛や腫脹がみられ,運動により増悪する.付着部やや近位外側にpump bumpとよばれる隆起を認めることもある(図28-39).踵骨後部滑液包炎では,滑液包を内外側からつまむことで疼痛が誘発される(two finger squeeze test).組織学的には,腱付着部の炎症所見と退行性変化が混在した病態が確認されている.


問診で聞くべきこと

 スポーツ活動や仕事内容など普段の運動量を確認しておく.また,最近に運動量の増加・練習内容の変更がないか,靴・走り方に変更がないかも確認しておく.


必要な検査とその所見

 超音波検査が有用である.腱付着部最遠位の骨棘や後上隆起の骨びらん,踵骨後部滑液包内の水腫,腱付着部の肥厚を認める.パワーDoppler法では,滑液包や腱付着部に血流増加を認める.MRIでは,腱付着部や踵骨後上隆起の異常を捉えやすい.


診断のポイント

①アキレス腱付着部か踵骨後部滑液包に一致した圧痛・腫脹を認める.

②足関節背屈やランニング・ジャンプ動作で,疼痛が誘発される.

③画像検査で,腱付着部最遠位の骨棘や踵骨後部滑液包内の水腫,踵骨後上隆起の骨髄浮腫像を認める.


治療方針

 全症例においてまずは保存療法を試みる.保存療法は少なくとも3か月は継続するが,症状の改善が得られない場合や再発を繰り返す症例に対しては,手術加療を考慮する.

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