診療支援
治療

母趾種子骨障害
Symptomatic hallux sesamoid
上條 哲
(医療法人研成会諏訪湖畔病院 整形外科・足の外科センター 所長〔長野県岡谷市〕)

【疾患概念】

 母趾種子骨は,趾節間(interphalangeal;IP)に存在するものと中足趾節(metatarsophalangeal;MTP)に存在するものとがあるが,IPの種子骨は約半数が欠損している.MTPの種子骨は,欠損例はまれで通常2個存在し,母趾種子骨複合体を形成している.種子骨そのもの,ないしは種子骨が原因で起こる種子骨複合体も含めた種子骨周囲の疾患を,母趾種子骨障害として総称することが多い.IPの種子骨に関しては,母趾IP種子骨障害として分けて考える.

【頻度】

 足専門医として診療していても月に1,2例ほどであるが,種子骨障害は見逃されている例が多く,潜在例が相当数あるのではと考えている.外反母趾や強剛母趾として加療されていた例や,原疾患を特定されないまま放置されていた例,皮膚科で加療されていた難治性胼胝がIP種子骨による物理的な刺激が原因だった例なども経験している.


問診で聞くべきこと

 職歴やスポーツ歴などの患者背景,現外傷の有無,外傷歴,病歴,歩容などに関連した先天疾患の有無,母趾および周辺愁訴での他医受診歴など.


必要な検査とその所見

 理学検査では局所の圧痛,腫脹,発赤,熱感などの一般的な所見のほかに,歩容,運動時痛,底背屈制限,他疾患の存在,さらに難治性足底角化病変などにも注意を払う.感覚障害やTinel徴候の有無も診ておく.

 画像検査は単純X線検査が基本であり,正面,側面,両斜位および軸写像が必要である.また,補助診断としてCT,MRI,骨シンチなどが挙げられる.

 外科的に摘出した場合には病理検査が必要になることもある.そのほか,全身疾患や感染が疑われる場合は血液検査も必要になる.


鑑別疾患で想起すべき疾患

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA),痛風,糖尿病(diabetes mellitus;DM)などの全身疾患に伴う母趾痛

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