2000年代から海外で小皮切による外反母趾手術の報告が増え,その1つのBösch法に準じ,わが国で井口らが第1中足骨遠位直線状骨切り術DLMO法(distal lineal metatarsal osteotomy)を報告した.日本整形外科学会外反母趾診療ガイドライン第2版より掲載され,軽度から中等度外反母趾に対して,術後早期では良好な成績が期待できるとグレードCに推奨されている.
DLMO法の適応は,保存療法に抵抗性のある軽度から中等度の外反母趾である.また外側軟部組織解離を追加することや短縮可能な骨切りの方法で,重度例にも応用することがある.第1中足骨骨頭下の小皮切で中足骨遠位を骨切りする.直径2mmのKirschner鋼線を骨切り部から遠位に向け,骨に沿わせ皮下に挿入し,骨頭を外側に移動させ,逆行性に近位骨片の髄腔内に固定する方法である.後療法は早期に踵荷重歩行を開始し,術後4~5週でKirschner鋼線を抜去,約2か月で通常歩行としている.
伸筋腱,屈筋腱の張力により骨片間に圧着力が働くため,固定材料はKirschner鋼線1本で,抜釘手術の必要もないため低コストである.また母趾の外観,特に爪の向きを見て母趾の外反・回内を矯正するため,手術時透視撮影の必要がない.手術時間が少ないため患者,治療側双方において負担の少ない術式である.利点を生かし局所麻酔下で行う外来手術,両側同時手術や,他の足部手術と併用して行える(図28-8図).
合併症は重度例において他の近位骨切り術と同様に外反母趾の再発,遠位骨片が近位骨片の外側へ逸脱し遷延癒合や,逸脱による第1中足骨長の短縮のため,新たに第2中足骨頭部底側に痛みを生じるトランスファーメタターサルジアがある.よって低侵襲ではあるが,治癒までに数か月を要し,前述した合併症もあることから,患者に十分な説明が必要である.
本法の特徴
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